乳がんと言われても慌てない! 聖路加国際病院
東京のような大都会に生きる女性は仕事中心の生活をしている人が多く、子供を生まない、高齢出産である、母乳で育てない、また初潮が早く閉経が遅い傾向などの理由で、乳がんの患者さんは年々増え続けています。「がん」といわれると、「死」を間近に感じ、頭の中が不安や恐怖で一杯になるのは当然の心情です。 しかし「がん」という病気は、そのレッテルが貼られた瞬間から病気になるのではなく、実は、1cmの大きさが見つかるまでには、7〜8年の長い歴史を経ています。すなわち、1個の細胞が2個に分裂するのに要する時間が、約90日と仮定し、約30回分裂を繰り返すと、1cmの大きさになるとすると、90×30=2700日(約7.4年)かかる計算となり、その時の細胞の数は、なんと230≒10億個です。 ただし、1cmで見つかった乳がんが早期といわれる所以は、もっとも転移しやすい場所である脇の下のリンパ節にがん細胞を認めるのは10人に1人程度であり、この段階できちんと手術を行うことでの10年生存率は、95%前後であるからです。すなわち、大多数は、いぼやホクロと同様にその場に留まっているとも言えます。 したがって、癌と診断された場合に、一日でも早く手術しないと、転移が心配だと、慌てられる方がいますが、そこは落ち着いて、まず自分の病気を正しく理解し、どのような治療手段がふさわしいかをじっくり検討する余裕があると認識してください。 乳がんの治療を進めるうえで最も大切なのは命を守ることですが、生活の質を落とさず、できるだけ今までの生活を保てるような治療を選択することも大切です。治療法を選ぶときは、診断の結果だけではなく、年齢や仕事の状況、家族構成や状況なども考慮して、自分にとって最も適した治療法を、担当医と一緒に選択していきましょう。
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